研究概要 |
ビリダンスレンサ球菌の一種であるStreptococcus gordoniiは赤血球凝集活性を持ち、研究代表者らは既に、その活性は糖を多量に含む菌体表層抗原(Hs抗原)によることを示した。また、Hs抗原をコードする遺伝子(hsa遺伝子)のクローニングを行い、hsa遺伝子の塩基配列より、この遺伝子は、2,178アミノ酸残基からなるポリペプチド(Hsa)をコードしていて、Hsaはセリンに富んだ2つの領域とグラム陽性菌のcell wall anchoring motifを有していてることが推定された。 本研究は、hsa遺伝子がHs抗原の構造遺伝子であるという更なる確証を得るために、S.gordonii遺伝子欠損株を作製し、この欠損株が赤血球凝集活性を欠いていることを確認した上で、hsa遺伝子を再移入し、赤血球凝集活性が回復することを確認することを目的として行った。平成12年度の研究では、S.gordonii DL1株のhsa遺伝子欠損株(Δhsa株)を作製し、Δhsa株が、赤血球凝集活性および抗Hs抗体との凝集能の何れも欠如していることを既に確認した。本年度の研究では、resident plasmid integration法[Shiroza, T. et al.(1998) Gene,207:119-126]を用いて、このΔhsa株へhsa遺伝子を再移入させ、Δhsa株で欠如した上記の付着活性およびHs抗原性が回復することを確認できた。さらに、cell wall ahchoring motifを欠いたHsaをコードする遺伝子領域のみを再移入しても、Hs抗原の発現はウェスタンブロット法で検出できたが、付着活性は回復しないことも明らかになった。現在、S.gordoniiのHs抗原が関与している付着の標的となる赤血球膜成分について検討中である。
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