研究概要 |
活性化誘導アポトーシス(Activation-induced cell death, AICD)は抗原刺激などによって活性化したT細胞が免疫応答が収束する際に起こる細胞死で、炎症の重要な制御機構である。このアポトーシスはFas/Fas ligandの遺伝子発現を介して起こっていることが明らかになっており、申請者はこれまでにマウスT細胞ハイブリドーマの抗CD3抗体刺激によるAICDにおいて細胞内ATP依存性プロテアーゼであるプロテアソームの阻害によりFas/Fas ligandの発現が転写レベルで抑制され、AICDが阻害されることを明らかにした。Fas ligandのプロモーター領域を用いた解析から、-241/-155領域に存在するGGGCGGAAACTTCC配列がFas ligandの発現に重要であり、かつプロテアソーム阻害剤にsensitiveな配列であることを明らかにした。TCR刺激によって生じる細胞内情報伝達系の活性化によるFas ligandの発現とユビキチンプロテアソーム系の関与を解析したところ、抗CD3抗体刺激によってERK及びJNKの活性化が認められた。プロテアソーム阻害剤によりERKの活性化は顕著に抑制されたがJNKの活性化は抑制されなかった。またMEKの阻害剤PD98059でERKの活性化を抑制すると、Fas ligandの発現及びAICDが抑制されることから、プロテアソーム阻害剤によるAICDの抑制はRas/ERK signaling pathwayを抑制することにより起こっていることが示唆された。RasのRaf binding activityはプロテアソームで抑制されるがLck, ZAP-70によるCD3zeta, Vavのリン酸化は抑制されないことからRasの活性化のステップでプロテアソームが何らかの機能をしていることが考えられた。
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