研究概要 |
口腔ジスキネジアの発症メカニズム解明には,大脳基底核についての広い観点からの知識の集積が必要とされる。ラットの片側側坐核ドパミンD_1/D_2受容体の刺激により誘発される回転行動は,大脳基底核の基礎的な研究に極めて有用なモデルであると考えられる。その発現に関与する遠心性投射路の一つに,側坐核からventral pallidum(VP)へのGABA性投射が考えられる。そこで本研究では,ラットの回転行動発現におけるVPのGABA_A受容体の役割を検討した。 片側のVP(A 8.7-8.45)にGABA_A受容体アゴニストのmuscimolを注入すると,非注入側への著明なcirclingが発現したが,その効果は,アンタゴニストのbicucullineの併用注入で抑制された。 片側側坐核にD_1受容体アゴニストのSKF 38393とD_2受容体アゴニストのquinpiroleとを併用注入して発現する非注入側へのpivotingは,同側のVPへのbicuculline注入で抑制されたが,注入側へのcirclingを発現した。一方,低用量のmuscimolを同側のVPに注入すると,pivotingは著明に抑制されたが,注入側へのpivotingが発現した。 片側側坐核にアセチルコリン(ACh)受容体アゴニストのcarbacholを注入して発現するcirclingは,同側のVPへのbicuculline注入で抑制されたが,注入側へのpivotingが発現した。一方,低用量のmuscimolの注入では,pivotingが発現し,さらに注入側へのcirclingも発現した。 以上の結果,片側VP(A 8.7-8.45)のGABA_A受容体の刺激で著明なcirclingが発現し,VPは片側側坐核ACh受容体刺激誘発circlingの遠心性投射先であり,D_1/D_2受容体刺激誘発pivotingの発現には抑制的に調節する可能性が示唆された。
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