研究概要 |
ラット耳下腺腺房細胞の開口分泌にSNARE仮説が示唆されており,シナプトブレビン(VAMP-2)やシンタキシン4,SNAP-23などが確認されていたが,これらがSNARE複合体の核になるのか明らかにされていない。昨年度,我々は耳下腺RT-PCRにより多くのSNAREタンパク質と膜融合に関与すると思われる複数のタンパク質を確認し、耳下腺におけるSNARE複合体の新たな組み合わせを予想した。また,ラットMunc18c(18-3)のクローニングを行い、GenBankに登録した(Accession No.AB046544)。今年度はMunc18-3とシンタキシンの細胞内局在と相互作用の検索を行い,以下の結果を得た。 1.Western blottingおよび免疫組織化学の結果、Munc18-3は耳下腺腺房細胞全体に存在し,特に形質膜および細胞内膜画分に多く認められた。 2.シンタキシン2は尖端膜に,シンタキシン3は尖端膜および分泌顆粒膜に,シンタキシン4は形質膜全体に多く認められた。 3.耳下腺細胞を5分間isoproterenol(IPR)処理することにより,Munc18-3は形質膜画分において減少した。通常,形質膜に存在するシンタキシンと結合しているMunc18-3がIPR処理により解離して,シンタキシンがSNARE複合体を形成しやすいように働いているのではないかと考えられた。 4.Two-hybrid assayによる相互作用の検討を行った結果,Munc18-3はシンタキシン2Aおよび、シンタキシン2C,シンタキシン4と結合することがわかった。また,シンタキシン4はSNAP-23およびVAMP-3と結合するものの,VAMP-2との結合は認められなかった。シンタキシン2Aおよびシンタキシン3ではVAMP-2およびVAMP-3,SNAP-23との結合が認められた。耳下腺腺房細胞の局在と考え合わせると開口分泌に関与するSNARE複合体にシンタキシン2および3も係わっている可能性が示唆された。
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