12年度に担癌ウサギを用い、頸部リンパ節の転移過程の観察をおこなった。本年度は、とくに炎症性および転移性リンパ節の鑑別に注目し以下の結果を得た。 1)超音波ドップラ法による頸部リンパ節の経時的変化の把握(白色家兎を使用) VX2癌細胞および炎症惹起物質の口底部への注入により頸部に転移性および炎症性リンパ節腫脹を起こした。転移リンパ節は、一過性に樹枝状の豊富な血管が描出されたのち、血流欠損部位の出現、増大を認め、最終的には全体が無信号となった。リンパ門の血流速は、一過性に増加するものの、腫瘍の増大により急激に減少するといった層性の変化を呈した。炎症性リンパ節に関しては、樹枝状の豊富な血管が描出され、血流欠損部位は認めなかった。リンパ門部の血流速も増大・急激減少といった二層性の変化は認めなかった。しかしながら転移性、炎症性にかかわらず一過性に血流速の増大を認めるため、とくに早期での血流動態解析における転移・非転移の鑑別は困難と考えられた。血流欠損部位の早期発見が、微少転移検出に有効であると考えられた。以上の結果より臨床応用を検討した。 2)術前照射前後の血管描出面積の変化による転移・非転移の検討(臨床応用) 微少転移発見の為に、術前照射による描出される血管構築の変化を検討した。正常な血管構造をもつ非転移リンパ節では、照射により血管径の増大、血流速の増大により、描出血管の面積が増大した。一方血管の破綻をきたした転移リンパ節は、血流信号の増大を認めなかった。微少転移巣を有するリンパ節に関しては、照射後は、周囲正常リンパ組織のドップラ信号が増強されるのに対して、腫瘍塊の部位は無信号として描出され、血流欠損部位の同定が容易となった。このような結果から20Gy〜30Gy程度の照射による末梢血管構築の描出改善より早期の微少転移の発見が可能となった。
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