研究概要 |
MRIは、関節円板、円板後部組織のような軟組織のみならず、骨髄の性状の診断も可能であり、これにより、下顎頭骨髄変化の存在が示唆されるようになった。しかし、下顎頭の骨髄変化はその頻度が低く、さらに多くの施設で行われている1種類のシーケンスのMR画像検査では、その診断が不可能といわれている。このような背景から、このentityに関しては体系的な研究がみられず、その病態は明らかにされていなかった。そこで、われわれは米国Rochester大学のWestesson教授らとの共同研究により、下顎頭の骨髄変化と変形性関節症、関節円板障害およびjoint effusionとの関連を報告した。さらに、下顎頭の骨髄変化と顎関節疼痛との関連の可能性を報告した。しかし、上記理由により縦断的検討がなされていないのが現状であり、骨髄変化の臨床的意義を明らかにする上で骨髄変化の経時的変化と顎関節疼痛との関連を検討する必要性がある。本研究の目的は、MR画像における下顎頭骨髄変化と顎関節疼痛との関連を縦断的に検討することである。臨床的に顎関節部疼痛が認められ、治療前および治療中にMRI診断が必要とされ、なおかつ本研究の目的を理解し、研究への協力の同意が得られた顎関節症患者に対し、治療前に顎関節の開閉口時の矢状断、T2およびプロトン密度強調画像を撮像し、下顎頭の骨髄変化を示す症例の検討を行なった。その結果、2年間の縦断的検討が可能だった1症例において、骨髄信号がedema patternからosteonecrosis patternへ変化した。それに伴い、顎関節部の疼痛症状が軽減した。以上より、下顎頭の骨髄が、edemaからosteonecrosisへ変化すると疼痛症状が軽減する可能性が示唆されたが、少数例での検討であり、以後、症例を増して引き続き検討する必要性があると思われる。また、Oslo大学(Norway),Rochester大学(USA)との共同研究により、joint effusionと下顎頭の骨髄変化、関節円板の状態および顎関節部の疼痛との関連について検討を行い、その成果を発表した。
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