平成13年度は平成12年度で得られた結果をもとに、象牙質のコラーゲン線維を損傷しない最も適正な酸濃度および原子間力顕微鏡の観察条件を検討するために以下の実験を行った。 実験方法:成牛下顎前歯30本を使用し、唇側面の象牙質が露出するまで#800耐水研磨紙を用いて研削し、唇面にネイルバーニッシュで5.0×10.0mmのウインドウを形成して象牙質試料面を得た。これらの象牙質試料を2.0M乳酸緩衝溶液、pH4.0、5mlに浸漬し、37℃恒温槽中に4時間静置した。その試料面を蒸留水で洗浄し、5mMCaCl2および0.02%アジ化ナトリウムを含む50mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.6)にて再び洗浄した。次に試料面の洗浄に用いた50mMトリス-塩酸緩衝液5ml中に細菌コラゲナーゼを1μg、100μg、500μgまたは1mgを溶解した各溶液に試料を浸漬して37℃恒温槽中に48時間静置した。その試料をFE-SEMと原子力間顕微鏡により観察を行った。 結果および考察:FE-SEM観察では1μg群の試料表面はCont.群と比較して特に著しい差はなく、直径2〜3μmの象牙細管の開口が観察された。100μg群の試料にはCont.群や1μg群よりもさらに著しい象牙細管の開口が認められ、また管間および管周象牙質にはコラーゲン線維が網目状に露出し、一部に破壊されている像が認められた。一方、500μg群と1mg群の試料表面には幅2〜3μmのうねりが認められ、Cont.群、1μg群、100μg群にみられた象牙細管開口像やコラーゲン線維の露出像は認められなかった。しかし原子力間顕微鏡の粘弾性システムで計測した場合に、象牙細管の開口部の表層に表面性状の柔らかい部分が観察され象牙質中のコラーゲン線維と考えられた。今後、実験系を見直してレーザー照射による象牙質のコラーゲン線維の変化を研究する予定です。
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