[研究目的] 本研究は、頭頸部の運動と顎機能の相互関係を明らかにするために、顎機能の一つ、咀嚼時における頭頸部の運動に焦点を当て、顎と頭頸部の協調運動の存在とその制御機構について調べたものである。 [研究実績] 実験にはウサギを用いた。麻酔下頭部固定状態で、大脳皮質咀嚼野に連続電気刺激を与えて咀嚼様運動を誘発し、下顎運動と頸筋および咀嚼筋筋活動の記録を行った。 後屈筋である頭半棘筋は咀嚼様運動に伴って持続的な活動を示し、下顎運動に同期する活動は見られなかった。木片を咬合した場合、持続性の活動は増加したが、下顎運動に同期するリズム性活動は見られなかった。このことから、平成12年度に本研究で行った慢性動物実験において、後屈筋の活動が開口時に(周期的に)減少したという現象は、頭位の変化によって二次的に姿勢反射として誘発されたものであることが推測された。 前屈筋である胸骨乳突筋は、空口咀嚼の場合は周期性の活動はほとんど見られなかったが、木片を咬合した場合には、閉口相にほぼ一致する活動を示した。これは平成12年度の慢性実験でも同様に観察された現象である。すなわち、咬合に起因する感覚情報が、周期性頸筋活動、ひいては周期性頭部運動の発生要因であることを示している。さらに、この前屈筋周期性活動のonsetが咬合相にやや先行する、というケースが半数で見られたことから、胸骨乳突筋の予測的制御機構の存在も推測された。
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