研究概要 |
義歯撤去時間の長さが,持続的圧力下の義歯床下組織における病理組織学的変化に対して与える影響に関しては,義歯床下組織を保全するうえで重要な情報であるにもかかわらず,詳細な検討は行われていない.本研究は,義歯床下組織の保全に関する検討の一環として,義歯撤去時間と持続的圧力下の義歯床下組織における病理組織学的変化との関連について検討することを目的とした. 実験動物には15週齢のWistar系雄性ラット125匹(25匹×5群)を用いた.各動物の臼歯部口蓋の左側には,義歯床下組織に対して持続的圧力を加える可撤性義歯床を装着し,右側には義歯床を装着することなく経過させた.持続的圧力の初期設定値は,破骨細胞による骨吸収を惹起することが確認されている6.86kPaとした.可撤性義歯床は,観察期間を通じて毎日定時に撤去して,義歯床下組織ならびに義歯床の清掃を行った.5群のうちの1群の動物には,清掃後直ちに義歯床を再装着し,残る4群の動物には,清掃後にそれぞれ4,6,8または12時間の義歯撤去時間を設け,撤去時間終了後に義歯を再装着した.義歯の初回装着時から2,4,7,10および14日後の義歯撤去時間終了時に,各実験群の5匹ずつから口蓋組織を採取した.採取した組織は,通法に従って固定,脱灰の後にパラフィン包埋し,第一臼歯部において前頭的に4μmの厚さに薄切し,H-E染色を施して光顕下で観察した. その結果,義歯撤去時間の増加は,持続的圧力下の義歯床下組織に生じる病理組織学的変化を軽減した.また,持続的圧力によって上皮組織ならびに粘膜固有層に惹起される組織変化の防止に要する義歯撤去時間は,骨組織における組織変化の防止に要するそれに比べて長いことが示唆された. 本実験の成果は,昨年度第104回日本補綴学会において発表し,その一部はJ Oral Rehabilにaccceptされ印刷待ちの状態である.
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