研究概要 |
日常臨床において前歯部の審美性に対する要求が高まる中で,硬質レジンは適度な強度と安定した色調性に優れ,成形性の容易さから歯冠補綴材料として多用されている.今回は,歯科用金銀パラジウム合金にチタンのスパッタリング時に窒素(反応性ガス)を注入する反応性スパッタリングを用いることにより、出力などの条件がTiNの持つ色調に与える影響について、分光測色計を用いて歯科用金材料と測色比較し、本スパッタシステムによるTiNの金色域の色調コントロールの可能性について実験を試みた。 被着試料には、歯科用12%金銀パラジウム合金を5×40×1mmの金属試料を鋳浩法により作成した。スパツタ時の放電出力は200、250、300、350、400、450、500Wの7種類とした。真空度は、1×10^<-3>、2×10^<-3>の2種類で、注入ガス量はアルゴンガス10.0sccmに対し窒素ガス2.0sccmの割合で行った。尚、コーティング膜厚は理論暉より1000Åとした。 コーティング試料の色調測定にはミノルタ社製分光測色計CM-2002を用いた。窒化チタンコーティング試料の色調の比較対称用金属として、14k、18k、20k、22k、24kを選択、個々のL*a*b*表色系により測色し比較対称値とした。 1.各金試料と窒化チタンの色差を比較すると、真空度1×10^<-3>では、出力250Wから350Wで、2×10^<-3>では、200Wから450Wで金試料に近い色調のTiNコーティングが可能と思われる。 2.放電出力は、真空度の高い場合黄色方向の色相を、真空度の低い場合赤方向の色相を示す傾向であった。 3.真空度1×10^<-3>では、TiNの色調は20k、22kと近似した色調で実用色差内であり、一方、真空度2×10^<-3>の場合では、TiNの色調は、18k20k近似しており実用色差内であうた。 以上より、ΔE*(色差)については、真空度1×10^<-3>は出力250W〜350Wで20k、22kと色差は小さく近似した色を示した。真空度2×10^<-3>では250W〜450Wで18k、20kと色差が小さく、色の近似が認められた。
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