研究概要 |
口腔癌の化学療法効果の判定は、切除標本での残存癌細胞の量的割合と形態学的変化の所見に基づいて行われている。しかし、その効果判定は主観的であることもあって治療成績を必ずしも反映しないことをしばしば経験する。本研究では化学療法による客観性のある定量的効果判定法を確立することを目的とした。 対象および方法:対象は術前化学療法ののち外科療法を適用した口腔扁平上皮癌一次症例90例とした。方法は生検組織と手術切除組織からH・E染色標本ならびにFeulgen染色標本を作製した。H・E染色標本を参考にして生検組織ならびに手術切除組織の癌発育先進部における核DNA量(平均DNA量)とMIを画像解析装置を用いて測定した。対象症例の化学療法効果を有効群(大星・下里分類Gr I, IIa)と不良群(大星・下里分類Gr IIb, III)とに分けたうえで術前化学療法前後の平均DNA量とMIの変化値、すなわち増殖動態の変化から術前化学療法効果を検討した。結果:平均DNA量とMIの変化値から化学療法効果を左方移動型:平均DNA量とMIがともに減少し、DNAヒストグラムが左方移動、右方移動型:平均DNA量が増加しDNAヒストグラムが右方移動したがMIが減少、無効型:前二者の変化が乏しいかMIが増加したものに分類した。有効群(n=40)の増殖動態の変化は左方型:27例、右方型:9例、無効型:4例で5年累積生存率はそれぞれ96.3%、100.0%、100.0%、であった。不良群(n=50)では左方型:16例、右方型:18例、無効型:16例で5年累積生存率はそれぞれ61.4%、81.2%、31.2%、で有効群と比較して多様であった。したがって術前化学療法の効果判定にあたって、大星・下里分類に核DNA量とMIの解析を加えることによって予後を反映するより確度の高い判定法となり得ることが示唆された。
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