研究概要 |
本研究では脊髄伝達物質の過剰な放出が脊髄伝達機構の変調にどのように関与しているかを明らかにすることをの目的とし、同時に臨床面で外傷性三叉神経ニューロパシーの病態の特異性を検討した。 ラットくも膜下腔内に予めPE-10カテーテルを留置し、くも膜下腔へNMDAを1μg/ml/minで連続に微量投与する。投与開始から10-20後から熱刺激に対する反応潜時が早くなり、痛覚過敏状態が惹起された。これは濃度依存性に反応潜時の現象が認められ、NMDAアンタゴニストMK-801で拮抗されることが明らかになった。これに対する組織的な変化は現在なお研究中であるが、形態変化を伴う不可逆的な変化のイニシエーションとして位置づけられ、今後の疼痛研究の基礎となりうる。 また臨床面では三叉神経ニューロパシーの病態に対する特異性を検討した。感覚神経線維Aβ,Aδ,C線維をそれぞれ定量化できるといわれるニューロメーター(東洋メディック・東京)を用いて傷害神経のCurrent Perception Threshold(CPT)を症状別、----Hypoesthesia, Dysesthesia, Allodynia, Hyperalgesia----に比較を行った。異常感覚の中でHypoesthesia DysesthesiaはそのAβ,Aδ,C線維の閾値のバランスは正常神経と同じで各成分ともに一様に上昇していたのに対して、Allodynia, Hyperalgesiaといった痛みを伴う症状での各線維のバランスは著しく変調していた。これは神経損傷後に各神経線維の傷害に対する抵抗性の違い、傷害からの修復速度の違いが存在するといった基礎的研究の裏付けとなり、こういった神経線維のアンバランスが症状に反映することを示唆している。今後はこの結果を症状からの予後予測や治療内容の選択性に役立てることができるど思われ、また基礎的研究の裏付けだけでなく今後の発展にも寄与するものと考えられる。
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