遺伝子銃は、外来遺伝子を導入する方法として、簡易に用いられるようになり、その発現効率も他の遺伝子導入法と比較して高い発現効率が報告されている。方法は遺伝子を加速金粒子に付着させ、目的の組織や細胞に射入する方法である。 今回の研究は、大動物の口腔粘膜に遺伝子銃を用いて遺伝子を導入し、その発現を確認するとともに、他の臓器と比較し、口腔粘膜が遺伝子導入の効果的な部位であるかを確認した。 実験方法:譲渡犬(成犬)における口腔の、舌背、舌下面、頬粘膜、口蓋粘膜に遺伝子銃(Helios Gene Gun)を用いて、遺伝子を導入した。その際、遺伝子はサイトメガロウイルスをプロモーターとした緑色蛍光タンパク(GFP)を使用した。射入の際、その圧力を200〜300Psiに設定し、それぞれの部位に射入した。射入から24時間毎、72時間までGFP遺伝子を射入部位にUV(489nm)を照射し、緑色蛍光の発色を検出した。また、同部位を一部切除し、病理細織学的に検討した。 結果:GFPの発現が最も高かったのは頬粘膜で、最も低かったのは口蓋粘膜であった。発現の持続時間についてはいずれの部位においても24時間後がピークで、その後徐々に減少し、72時間後にはほぼ消失していた。金粒子の到達深度については、頬粘膜が上皮から5mmと最も深く、口蓋粘膜は2mmと最も浅かった。舌背粘膜と歯肉はおおむね4mmの深達度であった。 病理組織学的には、射入部のHE染色において、明らかな細胞、組織の変性や壊死、出血などは観察されなかった。以上の結果から口腔粘膜が遺伝子銃を用いた遺伝子導入法として、有効な部位であることがわかった。 今後は、口腔悪性腫瘍の動物モデルを用いて、サイトカインを用い、直接病変部に遺伝子銃を利用し、その抗腫瘍効果を探るとともに、口腔粘膜における抗原提示細胞である樹状細胞の機能について解明したいと考えている。
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