研究概要 |
口腔外科気管内挿管困難症例において,患者にとってストレスの少ない無意識下でのファイバースコープによる気管内挿管法を確立する目的で本研究を行った. 1.気管内挿管困難症例に用いる器材の製作・試用 (1)フェイスマスク:既製フェイスマスクに別穴を開け,麻酔器からのガス供給路を設けた.気管内チューブとファイバースコープの挿入部位にはラバーを貼り,人工呼吸時のリークを防いだ. (2)ファイバースコープシステム:救急蘇生訓練用人形にて,(1)のマスクで人工呼吸を行ない喉頭ファイバースコープシステム(LF-GP ; Olympus,平成12年度備品として購入)を用いた気管内挿管法の安全性を確認した. 2.気管内挿管困難症例への使用・結果・考察 口腔外科気管内挿管困難5症例に対して全身麻酔導入後本システムを用いて気管内挿管を行った.気管内チューブとファイバースコープの径の違いによるリークはあったが換気に支障なく気管内挿管を施行でき,解剖学的に変形,萎縮のない症例(骨折,顎関節症など)では有用性が高いと考えられた.しかし,下顎部に著しい変形,萎縮が見られた悪性腫瘍術後の1症例では操作が難渋し,気管切開を行った(日本歯科麻酔学会関東地方会にて発表).この後,静脈内投与薬剤の変更(NLA法の応用),喉頭咽頭部の局所表面麻酔法の工夫により患者を無意識とするも自発呼吸を温存する挿管法に改良した.これにより気管声門部の観察が容易となり口腔の変形が著しい症例も含めた8症例全例にて本法による気管内挿管は成功し,本研究は一定の成果をあげたものと考えられた(第29回日本歯科麻酔学会総会にて発表). 本法により気管内挿管に伴うストレスを患者に与えない.しかし,通常の気管内挿管と比較して手技が煩雑であること,胃内容物逆流や鼻出血に遭遇した場合の対処法などが今後の検討課題である. 更に安全性に優れ,かつ簡便なファイバースコープによる気管内挿管方法の確立を目指したい.
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