唾液腺、乳腺、汗腺などの腺房細胞の周囲には筋上皮細胞が存在しこの細胞が分泌に何らかの関係があるのではないかといわれている。種々の唾液腺腫瘍において腺管様講構造とともに筋上皮の増殖が認められており、その由来について様々な検討がなされているが、その詳細については不明な点も多い。カルポニンは平滑筋細胞のアクチン、トロポミオシンの結合蛋白であり、筋上皮細胞のマーカーとして有用であることが知られている。今回ラット唾液腺の化学発癌過程における筋上皮の関与を検索するためにカルポニンの局在を発癌までの経時的変化を比較検討した。 正常顎下腺ではカルポニンは腺房および介在部導管周囲の筋上皮細胞および血管平滑筋に陽性に示した。発癌剤埋入後、短期間では萎縮した腺細胞周囲に陽性細胞を認め、その後発癌剤周囲に発生する前癌病変と考えられる重層扁平上皮層では、陰性を示したが、その外側に増殖する小さな導管様構造の周囲にはカルポニン陽性細胞を認めた。また癌腫形成後も扁平上皮化した部分では陰性であり、腺管状に増殖する部分では最外周の細胞に陽性を示した。腫瘍における腺管状構造の形成には胞巣最外周のカルポニン陽性細胞の配列が必要であろうと考えられた。 これらの結果よりカルポニン陽性細胞の存在が腫瘍細胞巣の形態と関係することが示唆された。以上を第46回日本口腔外科学会総会で報告した。
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