研究概要 |
HCV高感染地区のHCVキャリアを対象とした肝外病変の疫学調査-とくに口腔扁平苔癬 【目的と背景】我々は,以前にHCV高感染地区(福岡県H町)の住民検診を行ない,HCV感染者には非感染者よりも有意に口腔前癌病変が多いことや(Hepatol Res 1997),肝外病変の有病率が高いことを報告した(Gastroenterology 2000)。今回は他県でのHCV高感染地区(広島県O町)において口腔扁平苔癬(OLP)を初めとする肝外病変の疫学調査を行なった。【対象】O町のHCVキャリア59名(平均年齢70.7歳,M/F;21/38)。【方法】(1)口腔粘膜病変の診査(2)HCV抗体,HCV RNA, HCV genotype,抗核抗体(ANA),リウマチ因子(RF),抗SS-A, B抗体の測定(3)肝外病変の有無についての問診を行ない,検診結果については各住民に文書で報告。【結果】全員がHCV抗体陽性で,HCV RNA陽性者は57人,HCV genotypeは1b;45人(78.9%),2a;6人(10.5%),2b;5人(8.8%),1b+2b;1人(1.8%)。 OLP有病率は8.5%(5/59)(2人がびらん型,3人が網状型)で,白板症は1.7%(1/59)に認められた。口腔乾燥症状を有する者は25.4%,自己抗体が少なくとも1つ以上陽性であった者は42.4%(25/59),肝外病変を認めた住民は66%(39/59)であった。【結論】今回の結果は,我々の研究結果が特定の地域(H町)に限られた現象ではないということを実証した(Hepatol Res 2002,広島医学12,2000)。
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