研究概要 |
乳歯歯根吸収に関与する遺伝子の同定と吸収制御メカニズムの解明のために、以下の研究を行った。 乳歯歯根吸収または永久歯の歯根吸収抑制機構の発現のためには、遺伝子による調節機構が存在すると考えられる。申請者はそのうちの破骨細胞の分化調節因子であるosteoprotegerin(OPG)およびOPG ligand(OPGL)の遺伝子発現が、乳歯および永久歯の歯根膜細胞で差があることを示してきた。乳歯および永久歯の歯根膜細胞とマウス骨髄細胞を、それぞれ共存培養し、破骨細胞誘導能の検討を行った。 乳歯および永久歯の歯根膜細胞は10^<-8>M 1 alpha,25(OH)_2 vitamin D_3[1,25-(OH)_2D_3]および10^<-7>M dexamethasone(Dex)の存在下で酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ陽性(TRAP-positive)の破骨細胞を誘導可能であった。しかし永久歯歯根膜細胞は多核の破骨細胞は誘導できなかった。そこで1,25-(OH)_2D_3とDexに抗OPG抗体を投与して共存培養を行った。両者の歯根膜細胞はTRAP-positiveの多核の破骨細胞を誘導可能であった。 以上の結果から、乳歯および永久歯由来の歯根膜細胞は、全てOPG,OPGLのmRNAの発現が可能であった。またそのmRNAの発現強度は、1,25-(OH)_2D_3とDexによって調節されていた。OPGの蛋白質産生量も1,25-(OH)_2D_3とDexによって調節されていた。さらに産生したOPGLはin vitroで破骨細胞の誘導が可能であることが明らかとなった。しかしin vitroで再現性高く破骨細胞を誘導するためには、永久歯歯根膜細胞では抗OPG抗体の投与が必要であったことから、破骨細胞の誘導能は有するが、生理的条件下では破骨細胞の誘導を抑制していることが考えられた。以上の結果から乳歯の歯根吸収には、他の調節機構が存在することが示唆された。
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