研究概要 |
【研究要旨】唾液と毛髪の成分から顎骨成長評価に使用可能な成熟度指標を検討する. 【資料】対象は本学歯学部附属病院矯正科に来院し,全身的な疾患の既往がない8〜15歳の日本人女子とする.下顎骨の成長や成長タイミングを検討するために,骨格型反対咬合と診断された患者(classIII群)と,顎外力などの治療を行わない患者(classI群)の側面頭部X線規格写真(セファロ)撮影,手掌部X線写真撮影,身長計測と唾液・毛髪資料を用いた. 【経過】classIII群7名,classI群3名,コントロール(成人女子)1名の唾液を検討した.唾液は,サリバテストの手技に従い混合唾液を取得し,それらより測定可能な成長関連因子濃度と各成熟指標(暦年齢、骨年齢)との相関について調べた. 【結果】唾液中のIGF-I,プロゲステロン、エストロゲンは測定できなかった。唾液中成長ホルモンの測定は可能であったが、顔面骨格パターンとの関連は認められなかった。一方唾液中成長ホルモンは身長増加量と相関が見られた。 【結論】唾液中成長ホルモンを測定することにより,無侵襲に全身成熟段階の評価や顎顔面部の成長速度を知ることが可能であることが示唆された。 毛髪は頭皮から5cmを使用し,アセトンで洗髪後,Microwave用石英試験管容器内に濃硝酸を加え湿式灰化後,溶液化したサンプルをフレームレス原子吸光光度計にてZn濃度を測定した.国立環境研究所(NIES)から日本人標準毛髪試料のZnの測定を行い、毛髪の水分補正についても検討したところ,毛髪Znは加熱による水分蒸発に影響されないことが確認された.しかし、小児の毛髪は細く柔らかく、実験に適する十分な量を回収することが非常に難しいため、小量の毛髪からの微量元素の測定について,さらに検討する必要性があると考えられた.
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