研究概要 |
摂食・嚥下リハビリテーションの分野では,口腔・咽頭・食道領域の生理学的研究が広く行われており,訓練,指導法も多く認められている。しかしながら,手づかみ食べ,食具食べでの動作分析の詳細は明らかではなく,自食指導の診断基準や指導法は確立されていない現状である。本年度は,健康な成人の食具食べ動作における食具の移動過程と開口との関連を明らかにし,その結果を摂食・嚥下リハビリテーションの自食指導に応用することを目的に,3次元動作解析システムにてスプーン食べ動作を解析した。 対象は,健康な成人12名(男性5名,女性7名,利き手は右手)である。垂直座位の姿勢で,スプーンにて皿上のプリンをすくってから口唇で摂り込むまでの自食動作を綾野ら^<1)>の方法により撮影,解析した。スプーン食べ1動作におけるプリンをすくい上げた時点(s),開口開始時点(o),捕食時点(i)の4つの時点について検討した。 スプーン食べ動作において,すくい動作に近い時点で開口を認める者は,その際の上唇とスプーンとの距離が長い傾向であった。スプーン食べ動作において,捕食時点近くで開口開始を認める者は,すくってから開口開始までと,開口開始から捕食までとのスプーンの移動する速度に差が認められた。また,スプーンの追視は,開口開始後に終了する傾向であった。これは,捕食準備となる開口が終了すれば,食物の黙視は必要ないからと推察された。 文献:1)綾野理加,向井美惠,金子芳洋:摂食動作時における口と手の協調運動-手づかみ食べにおけるpick upから摂りこみまで-,昭歯誌,17:13-22,1997
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