研究概要 |
ヒト歯根膜線維芽細胞(HPLC)やヒト骨芽細胞(HBC)は各種骨吸収関連分子を介して局所における歯槽骨の破壊に関与しており、またこの機能は各種サイトカイン、プロスタノイド、成長因子、ホルモン等により複雑に制御されている。そこで今回、IL-1βとBMP-2によるHPLCとHBCの骨吸収関連分子(PGE2、RANKL)発現の制御機構を検討したところ、以下に示す結果が得られた。(1)IL-1βはCOX-2依存的にPGE2産生を促進する。(2)IL-1βはRANKL発現を促進し、この作用には内因性PGE2が部分的に関与している。(3)PGE2はEP2/4-cAMP依存的PKAを介してRANKLの発現を促進する。(4)IL-1β依存的なCOX-2/PGE2とRANKLの発現には、MAPK(ERK1/2,JNK1/2,p38)-AP-1カスケードとIKK1/2-IkBa-NFkBカスケードが共に関与している。(5)BMP-2はIL-1β依存的なCOX-2/PGE2とRANKLの発現を抑制する。(6)IL-1βはBMP-2依存的なSmad1のリン酸化を変化させない。(7)BMP-2はIL-1β依存的なMAPK、IKK1/2およびIkBaのリン酸化とその後のAP-1とNFkBのDNA結合を共に抑制する。以上結果から、HPLCとHBCにおいて、BMP-2はIL-1β依存的なMAPK-AP-1とIKK1/2-IkBa-NFkBの活性化の抑制を介して、IL-1βにより誘導されるCOX-2/PGE2とRANKLの発現を抑制すること、PGE2はEP2/4-cAMP依存的PKAを介してRANKLの発現を促進することが明らかになった。またこのことは、これらの細胞における骨吸収関連分子の発現は、IL-1β、BMP-2、PGE2それぞれのシグナルの細胞内でのクロストークにより複雑に制御されていることを示唆している。
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