研究概要 |
1,リン酸化セリン(p-Ser)は代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)に結合し,脳内における神経伝達を制御していることが示唆されている.mGluR選択的阻害薬の合成を目的として,p-Serのリン酸エステル酸素をジフルオロメチレンに置換し,側鎖を三員環で配座固定したp-Ser類縁体をデザインした.素反応としてアルケニルジフルオロメチレンホスホナートとジアゾメタンとの1,3-双極子付加反応およびシクロプロパン化反応を検討した.(E)-スチリルジフルオロメチレンホスホナートとジアゾメタンとの付加反応は位置選択的に進行し,3-フェニル-4,5-ジヒドロ-3H-ピラゾール誘導体(1)が得られた。芳香核上に電子供与基をもつ誘導体やアルキル誘導体では反応は進行しなかった。α,β-不飽和カルボニル誘導体の場合、環化後異性化がおこり,1H-ピラゾール誘導体が得られた。1はUV照射によりシクロプロパン誘導体へと導いた. 2,高活性なスフィンゴミエリナーゼ(SMase)阻害薬の合成を目的として,スフィンゴミエリンのエステル酸素をジフルオロメチレンに置換し,コリン部分を取り除いて加水分解に対して安定性を持たせた類縁体をデザイン・合成した.長鎖アルケニル基をフェニル基に置き換えた類縁体およびそのエナンチオマーを合成し,SMase阻害活性を評価したところ,これらの類縁体はウシ脳ミクロソーム由来Mg^<2+>依存性中性SMaseに対して非拮抗阻害することが明らかとなった.コリン部分を取り除いたスフィンゴミエリン類縁体でもSMase阻害活性を示すことが判明した.また天然スフィンゴミエリンと同じ立体配置を有する類縁体よりも、そのエナンチオマーの方が約40倍高い阻害活性(IC_<50>=5μM)を示し,高いSMase阻害活性を有する天然物シホスタチンとほぼ同等の阻害能を有していることが明らかとなった.
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