研究概要 |
酵母VMA1遺伝子がコードする一本鎖蛋白質は、中央部のDNAエンドヌクレアーゼ(以下VDE)を切り出し、N末端側とC末端側をペブチド結合で接続して液胞性ATPase触媒サブユニットを生成する。ポリペブチド鎖の切り出しと接続によるこの現象は、蛋白質スプライシングと呼ばれており、自己触媒的に進行する。 スプライシング反応ではC284, N737とC738が触媒残基と考えられている。これらをSerに置換し、N末端11残基とC末端10残基を付加して、スプライシング部位近傍のH362をAsnへ置換したスプライシング前駆体アナログX10SSS-VDEの大腸菌発現系を構築し、既に結晶化に成功しているので、これより得た回折強度データを用い、構造解析を進めた。 ネイティブVDEの構造を探索分子として分子置換法により初期モデルを得、結晶学的精密化を行った。2分子のX10SSS-VDEと205個の水分子を含むモデルに対し、2.1Å分解能までの反射に対する結晶学的R因子は0.198(R_<free> 0.240)である。野生型VDEの構造と比較すると、スプライシングを担うドメイン(残基284-368, 438-462, 700-737)では主鎖の平均二乗差異は0.33Åと構造はほぼ同じである。付加したペブチド部分のうち、N末端6残基とC末端4残基について、明瞭な電子密度が観察された。スブライシング活性残基C284に相当するS284側鎖Oγ原子とG283主鎖C'の距離は3.1Åである。C284SγからG283C'への求核攻撃により、チアゾリジン骨格を有するテトラヘドラル中間体が生成し、その開裂により蛋白質スプライシング反応が進行すると結論した。これらの結果を学術誌に報告した。
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