研究課題/領域番号 |
12771405
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
星野 理香 長崎大, 薬学部, 助手 (60315265)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | MAPキナーゼ / ヒト癌細胞 / 細胞接着 / 細胞骨格 / 転移 / 浸潤 |
研究概要 |
本年度はヒト癌細胞がMAPキナーゼのパターンによって3種類に分類されることの生物学的意義を、特に「細胞接着性」及び「細胞骨格系」の制御との関連に注目し、具体的には3種類に分類された癌細胞におけるインテグリン/Focal Adhesion Kinase(FAK)系、さらにRhoファミリー蛋白質の変動に焦点を当てて解析を進め、以下の結果を得た。 1.各癌細胞において、インテグリンβ1の量的変化をフローサイトメトリーおよび蛍光抗体法で、さらにFAKの機能変化についてはWestern Blot法および蛍光抗体法を用い、そのリン酸化の程度を指標として解析したところ、MAPキナーゼが恒常的に活性化されている癌細胞群においてはインテグリンβ1の発現量が有意に上昇しており、このとき同時にFAKもリン酸化(活性化)されていることが明らかとなった。一方増殖刺激時でさえMAPキナーゼの活性化が全く誘導されない癌細胞群においては、インテグリンβ1はほとんど発現しておらず、またFAKのリン酸化も起こっていないことを確認した。これらのことよりMAPキナーゼがヒト癌細胞において、FAK/インテグリン系を介した細胞接着性の制御に深く関与している可能性が示唆された。現在は各癌細胞の血管内皮細胞、あるいは種々の細胞外マトリックス成分への接着性等について解析中である。 2.アクチン細胞骨格形成において重要な役割を果たしているRhoA蛋白質の発現量を蛍光抗体法およびWestern Blot法でしらべたところ、増殖刺激に対してMAPキナーゼの活性化が全く誘導されない癌細胞群においては、RhoA蛋白質の発現量が有意に低下しており、一方MAPキナーゼが恒常的に活性化されている癌細胞群においてはRhoA蛋白質の発現量が一定レベルを上回っている傾向を認めた。次にこれらMAPキナーゼが恒常的に活性化されている癌細胞をMEK阻害剤PD98059で処理してMAPキナーゼ系を遮断したところ、その増殖はほぼ完全に抑制され、劇的な細胞形態変化が引き起こされ、このときアクチンストレスファイバーが消失しているのが観察された。さらにこのとき顕著なG1期停止が起こっており、CDKインヒビターの一種であるP27Kip1の発現が顕著に上昇していることを見出した。最近RhoAがP27Kip1の分解制御に関わっているとの報告もあることから、RhoAとMAPキナーゼ、およびP27Kip1との間に何らかの相関関係があるのではないかとみて、現在RhoAの活性型および不活性型遺伝子を導入した際の各癌細胞におけるMAPキナーゼ、あるいはP27Kip1の挙動についてさらに詳しい解析を進めている。
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