研究概要 |
上皮細胞を始めとする非興奮性細胞における細胞内Ca^<2+>濃度の調節機構は十分に理解されていない.本研究ではまず,肺胞上皮細胞がIP_3受容体(IP_3R)に加え,リアノジン受容体(RyR)を持つことをNorthern Blot法およびWestern Blot法により見出した.また,細胞膜透過標本を用いた検討の結果,IP_3およびryanodineはいずれも,細胞内Ca^<2+>貯蔵部位のCa^<2+>濃度の低下を誘発した.受容体アイソフォームを同定したが,本細胞のIP_3Rは1および3型であり,RyRは2型すなわち心筋型であった.種々の細胞株について同様の検討を行ったが,肺上皮細胞の中でA549細胞とL2細胞では,唯一,RyRの有無だけが異なっていた.そこで,両細胞の種々の刺激に対する細胞内Ca^<2+>濃度の変化を調べた.すると,RyRをもつA549細胞では,P_2プリン受容体作用薬ATPによるCa^<2+>の上昇が,一過性で強い上昇から持続的な弱い上昇へと二相性に推移したのに対し,RyRをもたないL2細胞では,一過性の強い上昇のみが認められ,その後の持続的な上昇は観察されなかった.また,高濃度KClによって誘発したCa^<2+>濃度上昇でも,同様にRyRをもたないL2細胞ではA549細胞に比べ細胞内Ca^<2+>濃度の上昇する時間が短い傾向を示した. 本研究の成果は,非興奮性の細胞である上皮細胞において,RyRが種々の化学的刺激に対して反応する細胞内Ca^<2+>シグナルの増幅機構として重要である可能性を示唆している.
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