研究概要 |
1,マウス肝細胞スフェロイド培養系におけるCYP3A誘導を核内受容体GR, PXRに注目し解析した。合成副腎皮質ホルモン(DEX)を培地に添加するとCYP3A41と3A44の発現は上昇し,抗グルココルチコイドRU486の同時添加でその誘導は阻害された。一方,3A11発現はDEX添加で増加し,RU486の同時添加でさらに強く誘導された。同様の現象がin vivoでも観察され,副腎摘出は全CYP3A分子種の発現を低下させ,PCN投与によって3A11は誘導され3A41と3A44は抑制された。RU486, PCNは共にPXRのリガンドとしても機能することを考え合わせると,以上の結果は3A11がGRとPXR両核内受容体によって,3A41と3A44はGRによって調節されており,その機構が培養細胞でも維持されていることを示唆している。 2,雌特異的発現に対する性ホルモンと成長ホルモン(GH)の関わりを検討した。培地にGHを添加すると3A41と3A44の発現が促進された。一方,in vivo誘導剤エストラジオール(E2)を培地に添加しても発現は促進されなかった。また,in vivo抑制剤テストステロンを添加しても抑制されなかった。しかし,E2とGHを同時に培地に添加すると,GH単独添加よりも大きな3A41と3A44の発現誘導が観察され,GH-R, ERの発現増加を伴っていた。この結果は,GHは肝細胞に単独で直接的に作用し,E2はGHと協調してGH-R増加などを介して3a41と3a44遺伝子に作用する可能性を示している。 3,Genome walkingを用いて単離したCyp3a41遺伝子を解析した。遺伝子断片は全長約3.4kbであり,5'隣接領域約3.3kbを含んでいた。5'隣接領域中には他の性特異的P450遺伝子の発現に関わるとされる転写調節因子(STAT5, HNF-3β, ER, C/EBP, AR etc.)が結合可能と思われる配列が多数存在し,それらによる発現調節が予想された。しかし,5'隣接領域3.3kbを含むレポタープラスミドを構築し,マウス肝初代培養細胞に導入しても明確な転写活性化は観察されなかった。これは,解析した領域中に抑制的に働くエレメントが存在する為か,培養細胞中のmRNA発現が転写調節研究に十分なレベルではない為かいずれかと考えられた。
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