研究概要 |
1.申請者はこれまでにヒドロキシ多環芳香族化合物(PAH-OH)の定量法としてHPLC-蛍光検出法を開発し,大気浮遊粉じん試料に適用してきた.大気浮遊粉じん試料に添加したPAH-OH(1-及び2-ナフトール,2-ヒドロキシジベンゾフラン,2-ヒドロキシフルオレン,9-ヒドロキシフェナンスレン,1-ヒドロキシピレン)は,エタノール40mlを用いて15分間超音波抽出を行うことで,効率良く回収することができた.しかしながら大気粉じん試料由来の妨害ピークにより,PAH-OHの同定及び定量が困難であった.そこで試料溶液のクリーンアップを目的として,種々の固相抽出カートリッジを用いて検討を行った.その結果,強陰イオン交換カートリッジ及びアミノプロピルシリカカートリッジを用いた場合にクロマトグラム上の妨害ピークをある程度取り除くことが可能であった.現在これらの固相抽出条件の最適化及び検出されたピークの同定を行っている. 2.次に乳試料中のPAH-OHの定量法の確立を試みた.内部標準として1-ヒドロキシ-2-アセトナフタレンを用いることで,PAH-OHの精度よい測定が可能となった.乳試料からPAH-OHの抽出法の検討を市販の牛乳を用いて行った.牛乳試料に添加したPAH-OH標準を,1)エタノールによる超音波抽出法,2)ODSカートリッジによる固相抽出法,3)SZ法(sub-zero temperature liquid-liquid extraction)によりそれぞれ抽出したところ,固相抽出法で最もよい結果が得られた.次に牛乳中のPAH-OHの定量を行ったところ,検討した牛乳からはいずれもPAH-OHを検出することはできなかった.現在,本法の高感度化を目指してシステムのダウンサイジングを検討中である.
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