研究概要 |
てんかんモデル動物には、化学物質や電気刺激などにより実験的に発作を誘発させたものや自然発症性に発作を起こすものがある。ヒトのてんかんに、より相応するものは慢性的かつ自発性にてんかん発作を繰り返すモデル動物である。われわれはこれまでに、Crj:ウィスターラットコロニーより見いだされた約30時間に1回の頻度で自発性にけいれん発作を起こす突然変異体(Noda epileptic rat : NER)が音刺激に感受性を有しており、幼若期からの音刺激プライミングによって高率かつ安定した発作を誘発できることを報告してきた(Epilepsy Res.,1998)。 そこで正常なウィスターラットに対しても音刺激プライミングによって安定した発作誘発が可能を否かについて検討した。Crj:ウィスターラットコロニーからのラット(F1世代)に3週齢か週1回30秒間の音刺激プライミングを行った。さらにF1世代の中で音刺激に感受性を示したラットを交配させF2、F3世代を作成し、同様の音刺激プライミングを行った。その結果、発作誘発はF1世代では20-40%に認められたのみであったが、F2およびF3では9週齢以降、それぞれ67-83%、71-86%と高率かつ安定した発作誘発が可能であった。さらにこれらの発作の重症度は、部分けいれんか全身けいれんかあるいは間代性けいれんのみか強直性けいれんを含むか否かによって分類しスコア化(audiogenic response score : ARS 0〜6)が可能であり、F3世代でのARSは週齢が増加するとともに増加した。 また、音刺激に感受性を示したラットの海馬、皮質に慢性脳波記録電極を設置し、発作間欠期脳波を検討したところ、海馬および皮質にてんかん波(multiple spike)が認められた。
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