身体移動に伴う視野の変化を自己の体動によって補正できるまでの身体動揺を測定した。今年度は測定項目を再検討すると同時に、昨年度のプレテストを基に高齢者を被験者とした実験を行った。 重心動揺測定は昨年と同様に、圧力センサはNEC三栄製の荷重変換器(9E01-L42-500N)を用いた。また、データはユニパルス製の増幅器(LC210)からキーエンス製のA/D変換機(NR-250)を介してIBM互換機のPCに取り込んだ。視覚刺激はオリンパス製のヘッドマウント・ディスプレイ(FMD-150W)に4mの道幅と左右に2mの高さの壁を映し出した。画像は被験者が道路を前進移動するよう視認できるように設定をした。ヘッドマウント・ディスプレイに映し出す画像は、静止画像とヒトが日常的に経験する3速度(4km/h、 20km/h、 60km/h)の動画像とした。 被験者は15名(平均年齢73.2±0.6歳)、男性7名、女性8名とした。分析は、視覚刺激を静止画像から動画像、動画像から静止画像へと変化させ、その時の身体動揺を0.1秒刻みでX軸、Y軸における動揺中心の変位で求めた。データ分析はt検定、分散分析をおこなった。 結果、静止画像から4km/hの動画像、20km/hの動画像ではそれぞれ身体動揺における有意差は認められなかった。しかし静止画像から60km/hの動画像では有意差(p<0.005)が認められた。3速度の動画像から静止画像へ変化させてもいずれも身体動揺における有意差は認められなかった。また、3速度の動画像間でも有意差は認められなかった。 今後は更に測定項目の検討を重ねつつ、対象者数を大幅に増やすことで、より科学性を追究した研究に発展させることを目指す。また、視知覚と姿勢制御との関連から転倒発生プロセスの解明の一助につなげていきたいと考えている。
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