わが国における在日外国人妊産婦を取り巻く医療・看護体制のうち、保健サービス体制に焦点をあて、その現状を把握することを目的に、I県内の保健施設で主に母子保健担当部署59ヵ所を対象に質問紙調査を実施した。そのうち49ヵ所から回答を得、回収率は83%。調査期間は平成12年12月〜平成13年2月であった。 その結果、約6割の市町村で在日外国人の妊産婦の増加を実感していたが、各地域の特性に応じた母子保健事業やそれに付随する情報提供などは、いまだ組織的な支援体制がとられていない現状が伺えた。日頃の活動の中でも言葉の問題に加え、在日外国人妊産婦への保健指導の実施の場合には、「母子」というとらえ方のみでは効果的な実施は困難な事が多く、家族機能の中での「母子」という位置づけの視点が非常に重要になるとの回答があった。地域特性の把握から、都市部での留学生の場合を除き、I県内では「外国人花嫁」という特性が理解できたが、その彼女たちのとりまく環境は多くの問題を潜在していた。 文献によると外国人花嫁たちは紹介による結婚をすることが多く、結婚や妊娠、出産を短期間で体験する場合が多い。そのため、このような国際結婚は花嫁側のストレスはもちろん、受け入れる家族側にも大きなストレスとなっていると報告されている。本研究からも「年の離れた夫、そうなれば当然親は高齢」そして「家族機能が弱い家庭」でしかも言葉、コミュニケーションが十分に機能していない状況が明らかとなった。その状況におかれている彼女たちやその家族への支援となると必然的に多くの労力と時間を要する事は想像に難くない。今後、ますます国際化が進展すると予測できるが、市町村単位ではなく広域的な事業として位置づけていくことが望ましいだろう。またそれぞれの部署との連携も十分機能しているとはいえない現状であることからネットワークづくりが早急に必要と思われ、今後の課題と考えた。
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