文献検索およびインターネットからの情報収集、移植医療関係者からの直接の情報収集を行い、生体部分肝移植の現状を調査した。その結果、脳死移植が始まったにせよ症例数が少なく、圧倒的な日本に置いての生体部分肝移植の必要性が理解できた。また、国内の肝移植技術の確立とそれにともなう実施施設の増加、また移植適応疾患の拡大もあり移植を希望する患者も増加している。手術も拡大傾向にあり、血液型不適合者間の移植やドミノ肝移植なども行われ成果を上げているなど、国内における移植医療技術の向上も要因であろう。その結果、1999年までには約1000例の生体部分肝移植手術が行われた。1998年から成人の生体部分肝移植が高度先進医療制度の適応になったため、それまでの1000万円以上の医療費負担が200万円前後にまで軽減されるなど社会的保障が進んでいる。しかし保険適応になっていない劇症肝炎などの疾患では以前と変わらない経済的負担が課せられている。また、家族間で臓器提供を強制されたり、緊急手術が可能となり充分な時間がないまま臓器提供の決断を迫られる場合もあるなどドナーの心理的な問題も懸念されている。 本研究の対象である成人期の患者への生体肝部分移植におけるドナーは健康な家族であり、親子間、同胞間、配偶者間での臓器提供がほとんどを占めている。多くの場合、ドナーは術後2週間で退院となり家族として移植患者を支える役割をとる。調査では生体肝移植ではレシピエントコーディネーターという特別な移植コーディネーターの活躍がある事がわかった。レシピエントコーディネーターは移植患者だけでなく、家族であるドナーにも多く関わっている。現在、生体肝移植のドナーにおける問題を提起しているのはレシピエントコーディネーターであった。今後はレシピエントコーディネーターからの情報も重要と考えられる。
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