研究概要 |
我々はこれまでの研究で,運動時の視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系を介する応答による副腎皮質ホルモンの分泌亢進に注目し,副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイド(GC)連続投与による細胞性免疫機能(NK活性)の変化を測定した.その結果,GC(0,1mg/kg/day)の5日間連続投与により細胞性免疫機能が亢進することを確認した.そこで本研究では生理学的レベルのGC連続投与による細胞性免疫機能の変動をGCの5日間連続投与後の細胞数及びホルモン・サイトカイン関連の遺伝子発現量の変動を中心に検討を加え,免疫機能亢進に至るまでの主要調節因子を明らかにすることを目的とした.そして本研究で,このGCの連続投与によるNK活性亢進は,basalな状態でのNK細胞活性化因子の発現及び分泌の亢進によって起こっているとの仮説を検証した. 7週齢のC57BL/6マウスをGC投与群,対照群の2群に分け,GC投与群にはGC(0.1mg/kg/day)を対照群には同量の生理食塩水を5日間連続で投与した.投与期間終了後,マウス脾臓よりリンパ球を採取し,各実験に供した. その結果,脾臓リンパ球をFACSにより解析したところGCの5日間連続投与群はCD3^+/NK1.1^-T細胞,CD3^-/NK1.1^+ NK細胞,CD3+/NK1.1^+ NKT細胞の割合がそれぞれ対照群と比較して有意に増加していた(p<0.01).この結果は前年度のGC連続投与4日目以降に脾臓NK細胞の割合が増加するという研究結果を支持するものである.また,RT-PCR法を使って脾臓リンパ球におけるGCレセプター,IL-2,IL-2レセプター,IFN-γ,IFN-γレセプターmRNAの発現量は対照群と比較して変動は見られなかった.したがって,これらの結果はGCの5日間の連続投与によるNK細胞活性亢進は脾臓リンパ球中のNK細胞およびNKT細胞の割合の増加によって起こっている可能性を示唆するものである.
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