研究概要 |
本研究では大きく2つの研究が行われた.まず,高校運動部員のコーピングの因子構造を明らかにし部員のコーピングパターンとストレス反応との関連性が検討された(研究1).次に,高校運動部員の認知的評価とコーピング,ストレス反応との関連性について検討された(研究2). N県の高校運動部員を対象に2回の質問紙調査が行われた(2000年9月,11月). 研究1について,高校運動部員のコーピングの因子構造が検討され(「問題解決」「回避」「カタルシス」「気晴らし」「肯定的思考」),4タイプのコーピングパターンが確認された.また,イベントが異なると部員のコーピング採用にも変化がみられ,コーピング採用はストレッサーの嫌悪度や経験頻度の影響を受けていることが考えられた.さらに,積極的なコーピングが部員のストレス反応を低減させることが明らかとなった. 研究2について,高校運動部員の認知的評価が検討された(「影響性」「コントロール可能性」).競技力イベントに対して影響力を高く評価する部員は消極的なコーピングを多く採用し,コントロール可能性を高く評価する部員は積極的なコーピングを多く採用することが示された.また,競技力イベントに対して影響力を高く評価する部員は全般的にストレス反応の表出が高く,コントロール可能性を高く評価する部員は全般的にストレス反応の表出が低いことが示された.さらに,ストレッサーの影響性を高く評価している部員であってもコントロール可能性を高く評価している部員の場合はストレス反応の表出が比較的高くないことが示された. このような知見は,高校運動部員の心理的ストレス過程の理解を深め,彼らのストレスマネジメントを考えるうえで有益な資料になると思われた.
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