研究概要 |
肝マクロファージであるKupffer細胞の抗腫瘍作用には,腫瘍壊死因子α(TNF-α)および一酸化窒素(NO)が関与する.これらの分子の運動習慣による変化を明らかにし,さらにKupffer細胞における発現機序について検討することを目的として本研究を実施した.Fischer344系雌ラットを使用し,回転ケージによる10週間の自発運動を行なわせた結果,Kupffer細胞数,Kupffer細胞接着能には変化が見られなかったが,貧喰能の亢進とともに,TNF-α,およびNO産生能の亢進が観察された(in vitro).そして,急性運動時に上昇するグルココルチコイドのTNF-αにおよぼす影響についてin vitroで検討した締果,post-transcriptionのレベルでKupffer細胞のTNF-α産生抑制に寄与している可能性が示唆された.この結果から,激運動後に生じる一過性の免疫機能低下(オープンウィンドウ説)の作用機序に内分泌機能が関係していることも明らかとなった.さらにNO合成酵素であるiNOS遺伝子発現が,運勲時に上昇する血中乳酸によって亢進する可能性も示唆され,NO産生が乳酸によって変化することが示された(in vitro).これら運動時に変化するホルモナルな刺激や,代謝産物の影響によって,運動習慣(繰り返される運動刺激)によるTMF-αおよびNO産生能の亢進が生じているのかもしれない.そして運動習慣によって肝細胞癌に対する抗腫瘍効果が生じる機序には,Kupffer細胞が関与する可能性が示唆された.
|