研究概要 |
建築を構成する材料の中で最も人に近い存在であり,特有のテクスチャーによって空間の印象に大きく影響すると考えられる建築仕上げ材の質感を取り上げ,今後の設計計画に役立てるための評価指標の確立を目的として,反射指向特性の検討を行った。 質感を左右さる照明要因である照度と,テクスチャーの知覚に関連する指向性の強い照射光の照射角度について,被験者を用いた評価実験により考察したところ,以下のことが明らかとなった。光沢感,あたたかさ感,やわらかさ感は照度の上昇とともに評価が高くなる傾向が顕著にみられた。この傾向は,試料表面の凹凸の大小が関係し,凹凸の幅の小さいほうが照度の影響を受けやすい傾向があった。また,照射角度による質感の変化をみたところ,光沢感,あたたかさ感,やわらかさ感は照射角度が大きくなるにつれ評価が低くなるのに対し,粗さ感は照射角度が大きい場合に評価が高くなった。これらの傾向の大小は,表面のテクスチャーに依存しており,凹凸の幅によって異なった。 これらの質感を客観的に表現する評価指標としての三次元反射指向特性を検討するため,測定装置を作成し,種々の角度で輝度を測定することにより検討を行った。従来,視環境計画に組み込む簡易な反射指向特性の表現は構築されていないことから,本研究は測定装置の精度と測定手法の確立もあわせて目的とした。測定の結果,内装材程度のテクスチャーを有する試料に対しては,入射角が大きい場合に反射特性に特徴が現れることが見出された。また,測定角について,正反射方向近傍の反射特性にテクスチャーの特徴が現れ,テクスチャーとの対応について大概を知ることができた。すなわち,質感評価指標としての三次元反射指向特性の有効性を確認できたと考える。また,測定については,現在は角度の変化を手動で行っているが,自動化することで精度・効率ともにより改善できると考えられる。
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