研究概要 |
簡易反発硬度試験(エコーチップ反発硬度試験)を用いた石造文化遺産の健全度調査手法を新たに開発するための研究の一環として,本年度は主に,(1)風化した岩石を用いた基本特性調査,(2)割れ目を含む岩石を用いた基本特性調査,(3)超音波速度試験や他の硬さ試験法との試験結果の対応関係調査,(4)エコーチップ硬さ試験器による石造文化遺産の健全度調査,などを実施した。 本年度の研究を実施した結果,得られた主な知見は以下の通りである。 (1)人工風化岩を用いた風化層厚hの評価に関するエコーチップ反発硬度試験を実施した結果,エコーチップ反発硬度試験の硬さ値Lを用いて人工風化岩の風化層厚h,すなわち岩石の風化の進行状況を概ね推定できることがわかった。 (2)日本各地より採取した岩石供試体,すなわち砂岩,頁岩,緑色片岩,ホルンフェルス,花崗岩を対象としたエコーチップ反発硬度試験の硬さ値Lと一軸圧縮強度quの対応関係について調査した結果,用いた全岩石においてqu-L関係に関して全体的に正の相関性が見られること,また,特に砂岩に関しては非常に明瞭な相関関係が存在することがわかった。 (3)種々の岩石供試体を用いて得られたエコーチップ反発硬度試験の硬さ値Lと,超音波パルス法により得られた縦波速度Vpおよび横波速度Vsとの対応関係について調査した結果,Vp-L関係およびVs-L関係の両方に相関性が見られ,特に後者の方がより強い相関関係が存在することがわかった。 (4)現地の露頭岩盤および石仏を対象としたエコーチップ反発硬度試験を実施した結果,石造文化遺産の健全度調査手法に対するエコーチップ反発硬度試験の適用性に関して大略見通しが得られた。
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