研究概要 |
我が国の場合,学習者の認知発達の観点からの理科教材配列に対する議論が大きく立ち後れている。そこで昨年よりイギリスCASEプログラムの特徴とその実績を紹介し、従来の認知発達と理科教材配列の関係に問題提起を行ってきた。 本年度本研究では,主に,咋年度の硫究成果として得られた,新しい認知発達論からの科学概念獲得研究フレームワークに基づき,「溶液の均一性」を題材に,小学生から大学生を対象に,学習者のメタレベルでの科学概念の獲得軌道を検討した。 得られた貴重なデータの分析結果は,日本科学教育学会年会にて,「理科学習による概念変化における存在論的推論の役割」というタイトルで発表され,新しい認知発達観に基づく理科学習の在り方が提案された。ここで提起された枠組みから,授業分析等様々な発展可能性が示唆された。 そうした成果は,愛媛大学教育学部紀要に,「溶液の均一性概念の獲得における常識知の役割」としてまとめて発表された。 さらに,フィリピンより,科学カリキュラム・常識知研究者であるフィリピン大学教育学部助教授のアメリア・ファハリド博士を日本へ招聘し,日本の小学校教師,中学校教師,教員養成系大学生を交えて,愛媛大学にて「子どもの常識知と理科カリキュラム」と題してワークショップを開催した。そこでは,文化交差的に学習者の常識知の実態について検討がなされ,新しい認知発達観に基づく理科教材配列の在り方について率直な意見交流が行われた。
|