研究概要 |
本研究の目的は,これまでのマイクロエスノグラフィーの方法論の限界として,ある意味で仮定されてきた,相互作用のパターンと生徒たちの数学学習との整合的関係そのものに焦点をあて,この関係を実証的に解明することである。 平成12年度の主な研究成果として,少なくとも授業に積極的に参加している生徒は,そこで起こっている相互作用と整合する数学学習を成立させているということや,数学学習に影響する授業の相互作用の質が,教師だけではなく,学習者たちの独特な参加の仕方が存在し,これに影響を受けていることが明らかになってきた。 平成13年度は,一連の授業のビデオデータ,その筆記録,フイールドノート,及び授業後の生徒たちへの臨床的インタビューのデータを対象として,平成12年度において明らかになってきたこれらの研究成果を中心に更なる検討を加え,相互作用と数学学習との間の関係に関する更なる分析・考察を行った。その主要な結果として,(1)ある生徒が授業における教師との相互作用において数学的意味を発展させる過程において,その相互作用を支えている別の生徒が存在し,両生徒は互いに学び合う関係を同時に形成していたこと,(2)生徒たちの独特な参加の仕方は,ある特定の生徒の特徴というよりもむしろ,この教室独自の小さな文化を形成していたということ,(3)生徒の対象への係り方,ないしは,数学的な「知り方」は,この教室独自の小さな文化の形成とともに構成されていたということ,が明らかとなった。
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