研究概要 |
本研究は,ネットワーク分散環境上での動的負荷分散機能を実現する並列オブジェクト指向分散クラスライブラリを実際に設計・構築し,不規則性をもつ大規模並列計算に適用してその有効性を検証することを目的とする:対象とする実行環境にはSMP型のPCやワークステーションをネットワーク接続したクラスタを想定し,台数は数台から百台の規模とする.ネットワークは,イーサやMyrinetなどで結ばれたLAN,及びLANをルータで接合したもの(広域分散環境を想定)とする.クラスライブラリは,オブジェクト指向言語Eiffel(またはC++,Java)を基にして構築し,分子シミュレーションや流体シミュレーション等の不規則性を持つ大規模並列計算を対象問題とする. 本年度は,(1)「各PCの負荷を平衡させるための動的な負荷分散法」の開発,および,(2)動的負荷分散を効率よく行なうための「ネットワーク負荷を考慮したPC間データ転送の仕組」の開発,について研究を行なった.(1)については,大規模分子動力学計算を例に,10台程度の規模のPCクラスタをもちいて,各PCでの粒子数(負荷)を常に一定に保つためのアルゴリズムを考案・実装し評価を行ない有効性を検証した(成果[1]).(2)は,動的負荷分散そのものに直接関係するものではないが,負荷の転送などPC間でデータ転送を行なう場合に,ルータによる適切なスケジューリングにより転送効率(スループット)を向上させ,間接的に動的負荷分散の性能を高めることを目的としている.これまでに,実際にスケジューリング・アルゴリズムを考案・実装し,10台規模のPCをルータを介して接続したネットワークを例に,シミュレーションによりアルゴリズムが機能することを確認した(成果[2]).
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