研究概要 |
本研究では,並列スーパーコンピュータ等で大規模計算を行う場合に広く利用されているMPI(message passing interface)のための,並列ファイル入出力機構の研究を行った.具体的には,MPIで書かれたプログラムの並列実行部分から呼び出されて集団型入出力(collective I/O)を行う関数群を構築するための基礎技術の開発と,プロトタイプの実装を行った. 平成12年度は,プログラムの並列実行部分で各プロセッサが並列計算機に搭載されている複数のディスク装置を同時に駆動することにより高い総合転送速度を達成する,並列入出力ライブラリの研究を行った.また,並列実行部分の各プロセスが呼び出しても,全体として同一ファイル中の必要なデータがそれを必要とするプロセスに直接供給されるような入出力インタフェースの仕様を定義し,プロトタイプを開発した.実験の結果,従来型の入出力インタフエースに比べ,数十倍の性能向上が得られることがわかった. 平成13年度は,このプロトタイプを改良して,別の並列計算機上で動作する2つの並列プログラム間でディスクを介することなくデータをやりとりするための遠隔並列パイプ機構を実装した.この技術は,並列計算をいくつかのフェーズに分け,それぞれを異なる並列計算機の上でパイプライン上につなぐことにより,より大規模な演算性能を達成するためのものである.また,各計算機資源が遠隔地にあるため大きな通信遅延が発生するような広域グリッドコンピューティング環境においては,このような遠隔並列パイプ機構は,通信遅延を隠蔽するために非常に有効である.
|