研究概要 |
本研究では,消費者のテレビ広告に対する認知態度および認知処理プロセスを分析するための,眼球運動解析を利用した分析技法を開発した.ここで開発した分析技法は,次に述べる2種類である.1つは,テレビ広告のシナリオ進行と眼球運動の対応に基づき,消費者の認知態度を明らかにするというものである.この分析技法では,(1)テレビ広告のシナリオを表現するためのフレームワークの整備,(2)注目度,興味,テレビ広告の製作意図との対応等に関連する指標によるテレビ広告に対する認知態度の定量化,というステップを経ることにより,認知態度の分析を可能としている.2つめの分析技法では,シーンの意味的構造に着目し,これと眼球運動の対応をとることによって,消費者の認知処理プロセスを分析するというものである.このような分析を可能とするために本分析技法では,(1)テレビ広告のシーンの意味的構造を明らかとするためのシーン記述方法論の構築,(2)シーンに対する情報処理の傾向および個人差を示す指標による認知処理プロセスの定量化,という手順を踏む. テレビ広告を用いた視聴実験を行い,これらの分析技法の妥当性を検証した結果,ここで対象としている認知態度および認知処理プロセスを,実用に耐えうるレベルで分析できることがわかった.さらに,認知態度および認知処理プロセスに影響を与える要因の抽出することができ,効果的なテレビ広告の制作に向けた有用な示唆を得ることができた.
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