研究概要 |
(1)現有設備の超電導マグネット(最大磁場強度4テスラ,内直径40cm,長さ40cm)の内側に直線型真空容器(20cm角,長さ60cm)を設置し,真空容器内部に高周波電極(直径10cm)と,そこから約2cm上に接地電極(直径10cm)を設置する.接地電極は同心円状に2分割されており,外側の電極は接地,中央の透明電極には外部から直流電位を印加できるようになっている.高周波放電アルゴンプラズマを生成し,そこに,外部から粒径10μmの単分散アクリル微粒子を注入し,プラズマ中に微粒子雲として浮遊させる.微粒子の挙動は,径方向からレーザーを微粒子雲に照射し,その散乱光を上方向からCCDカメラで撮影して解析する. (2)昨年度の実験結果から,垂直方向に磁場を印加し,中央の透明電極に電位を印加することで,微粒子雲が水平面上で剛体回転を始め,その回転方向,速度が透明電極電位に依存していることが分かっている. (3)本年度は先ず,この微粒子雲回転運動の磁場強度依存性を観測した.その結果,磁場の増大とともに回転速度は増加していくが約1テスラで最大になり,その後は磁場の増大とともに回転速度は減少し次第に飽和していくことが,テスラ級の強磁場を印加することによって初めて明らかになった. (4)次に,アルゴンガス圧力を変化させて(3)と同様に磁場強度依存性を観測したところ,ガス圧力の増加とともに微粒子雲回転速度が最大になる磁場強度が正にシフトしていくことが分かった.これらの結果は,微粒子雲の回転がアルゴンイオンとの衝突により駆動され,そのアルゴンイオンの衝突時の運動量がイオンサイクロトロン周波数とイオン-中性ガス衝突周波数との関係で決まるためと考えられる.微粒子雲回転速度が最大になる時,これらの周波数がほぼ一致していることも明らかになった. (5)微粒子雲に衝突するイオンの軌道をモデル化し,微粒子雲回転速度の数値計算を行ったところ,ほぼ実験結果と一致し,テスラ級強磁場中での複雑な微粒子雲の回転機構を説明することができた.
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