研究概要 |
流れのあるプラズマに関する安定性理論の研究を行った. 1887年にKelvinによって発表された解析手法が,線形プロファイルをもつ流れのあるプラズマについて一般解を与えることを数学的に示し,その手法に基づいて磁場閉じ込めプラズマ中の電流駆動不安定性,及び圧力駆動不安定性の解析を行った.流れによって作用素がエルミートでない場合にも,プラズマの線形運動が変形していくモードに分解できることを示した.これらのモードはエルミート作用素に対する指数関数から大きく外れ,過渡的な成長を示すと共に,漸近的には時間について代数的に減衰することを示した.すなわち,流れの効果がプラズマ中に内在する不安定性を安定化させるわけである. また表面波モデルを用いたKelvin-Helmholtz不安定性の解析において,従来見過ごされてきた連続スペクトルと点スペクトルとの非エルミートな相互作用による,共鳴現象が存在することを示し,数学的なスペクトル理論を構築した.非中性プラズマにおけるdiocotron不安定性についても解析を行った.固有値解析では流れによる不安定性が磁気シアーによって安定化されることを示した.初期値問題を数値的に解くと,作用素の非エルミート性から連続スペクトル同士の周波数縮退による共鳴現象が起こり,空間的に局在化する代数的な密度揺動の成長が起こることを示した. 次に,相対論的速度をもつプラズマについて,高周波の波動は1次元縞状のソリトン解をもつ.これは中性流体において有名なKelvin-Helmholtz不安定性に類似した不安定性によって2次元に崩壊するが,その際に角運動量を生成する.この2次元解は非常に安定であり,それらが何らかの理由である距離以上に離れると,その角運動量は保存される.不安定性の非線形発展に関しても数値計算を行い,実際に縞状ソリトンから2次元の渦ソリトンの形成まで,時間発展を追うことによって角運動量の生成が起こることを示した.この研究に関してさらに論文を執筆中である.これは応用上,初期宇宙の角運動量形成に関連がある解として興味深いものである.
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