研究概要 |
本研究の目的は、核融合炉の炉壁周辺に存在する低温水素プラズマと第1壁表面との相互作用についての基礎研究であり、まあ、本研究室の磁場膨張プラズマジェット装置をもしいての分光測定による励起状態反射粒子光の検証である。本実験においては、実験前の段階で数値解析から拡散方程式による金属試料内の水素密度分布、水素原子拡散の定常到達時間を考慮してからおこなった。 実験では、低温高密度水素プラズマを高Z材に属する4種類の金属試料Mo, Nb, W, Taに照射し、そのときの試料への照射時間に対する強度、密度、温度の依存性を調べ、プラズマパラメータとして各試料照射における電子密度・温度を求めた。さらには、各試料に対し水素プラズマを照射した場合と試料の存在しない場合の分光計測結果の比較を行い、金属からの反射粒子中の励起状態の密度分布等について考察を行った。 試料温度を変化させたときのHα、Hβ、Hγの上準位に対応する(すなわち主量子数3, 4, 5)励起準位密度は、モリブデンにおいては上昇し、ニオブでは顕著な変化が見られず、タングステン・タンタルでは若干の減少傾向にあった。また、試料がないときのプラズマの揺らぎは、十分小さいことも確認した。 Hαに対するHβ、およびHγにおける強度比に関しても、同族同士での性質の類似点は少なく、各金属試料ごとにそれぞれ異なる結果となった。一方、水素プラズマを各試料に照射した際、温度が定常に到達する時間も同様の結果となった。 標的金属に直接電流を流すことにより加熱し、同様に実験を試みたが、特に際だって変化はなかった。また、熱力学的諸量との相関を見いだす試みもおこなったが、系統的なものは見いだせなかった。いずれにしても照射水素の基底状態のフラックスを正確に把握する方法を確立しないと研究の系統的な評価が困難であることも判明した。
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