研究概要 |
VavのSH3-SH2-SH3ドメイン領域について,N末端側SH3ドメインとC末端側SH3ドメインに関して立体構造解析を完了し,以下に示す結果を得た. [N末端側SH3ドメイン]このSH3ドメインは,その内部にSH3ドメインの結合標的とされている"プロリンに富む領域"を含んでいる.このSH3ドメインの核磁気共鳴スペクトルを測定し,その立体構造を精密に決定した.さらに,このSH3ドメインに対して,生体内での主要な結合ターゲットであると考えられているGrb2のC末端側SH3ドメインを溶液中で滴定し,核磁気共鳴スペクトルの変化を追跡したところ,両者の結合様式は,一般的な"プロリンに富む領域"を認識する相互作用機構とはまったく異なり,SH3ドメインとしては新規な分子認識機構によることがわかった.この研究成果は雑誌論文として発表した. [C末端側SH3ドメイン]このSH3ドメインは,N末端側SH3ドメインとは異なり,一般的なSH3ドメインの特徴を保持している.このSH3ドメインについて安定同位体試料を作成した.また,その結合標的タンパク質であるhnRNP-K由来の"プロリンに富む領域"を含む合成ペプチドとの複合体の核磁気共鳴スペクトルを測定し,その立体構造を精密に決定した.その結果,両者の相互作用様式は,SH3ドメインの分類法で"マイナス配向"の結合であることがわかった.この結果を基に,VavのN末端側SH3ドメインとC末端側SH3ドメインが結合しうると考え,His-tagプルダウンアッセイをおこなったところ,両ドメインの結合をSDS-PAGEゲル上にて確認した.この結果は,VavのSH3-SH2-SH3ドメイン領域のふたつのSH3ドメインが分子内マスクすることで,標的分子との相互作用のオン・オフを厳密に制御していることを示唆する.この研究成果は,現在雑誌論文として投稿準備中である.
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