研究概要 |
ハプテン・キャリアー抗原と抗体との相互作用解析を行い、ハプテン(NP)の導入数、キャリアー蛋白質(HEL,OVA,BSA)の大きさ、抗原・抗体の濃度比により、形成される複合体の結合比やその親和性が異なり、細胞表面上の抗原レセプターが関与する複合体形成機構を明らかにすることができた。これらの成果はMolecular Immunology誌に掲載された。 上記でキャリアーに用いた蛋白質そのものを抗原として、その抗蛋白質抗体を調製し、それらの相互作用解析をBIAcore、ITC、超遠心分析を用いて行った。その結果、HELに対しては2:1の複合体が形成されるのに対して、OVAやBSAに対しては1:1の複合体の割合が増えることが明らかになった。これらの結果は上記のハプテン・キャリアー抗原を用いたときの結果を支持するものであり、抗体のFab部分の可動範囲を明らかにしたと考えられる。さらに抗体のFc部分を固定した場合に1:1複合体の割合がさらに増加することから、Fab部分とFc部分の間に何らかの構造的相関が存在することが示唆された。これらの成果は現在、論文投稿準備中である。 IgG抗体が2本のFab腕であるのに対して、IgM抗体が10本のFab腕を有する意義を探るべく、同じパラトープをもつIgG、IgM両抗体、及びIgMを還元アルキル化した単量体などを調製し、各種ハプテン・キャリアー抗原との相互作用解析を行った。その結果、各Fab腕が有する親和性(affinity)が低い抗体では、多価結合により高められる親和性(avidity)が抗原となるハプテンの密度に大きく依存することが明らかになった。すなわち免疫初期に産生される抗体は、少なくとも平衡状態で、ある密度以上の抗原に対してのみ免疫後期の抗体と同様の抗原結合能を有することが示された。
|