研究概要 |
前年度までの実験において,GrbELのアピカルドメインにトリプトファン残基を導入したGroELR231W変異体がATPや補助蛋白質のGroES存在下で構造変化を反映する多数の蛍光強度変化を示すことを解明した。本年度ではこの結果を受けGroELR231W変異体を用いて観測することができた構造変化がGroELの機能的性質から提唱されているサイクル反応機構とどのような関連性を持つのかを詳細に解析するため,GroELの機能に何らかの影響を及ぼす「機能障害」型の変異体をGroELR231W変異体にさらに導入し,この機能障害によりR231W由来の蛍光強度変化がどのように影響されるのかを詳細に解析する実験を行った。数種類の機能障害変異体とGroELR231W変異体との2重変異体を作成し,基礎的性格付けを行った結果,GroELC138W変異体との組み合わせにおいて興味深い結果を得ることができた。GroELC138W変異はGroELに温度依存的性質をもたらす変異で,この変異体は37℃では全く野生型と変わらない性質を持つが25℃では結合した基質蛋臼質分子を再び溶液に放出する直前の段階で反応が停止する性質を示す。この変異体とR231W変異体を組み合わせた2重変異体は温度に依存してトリプトファン由来の蛍光変化が大きく異なることを解明した。このことよりさらに,GroELの反応機構において標的蛋白質を溶液中に放出するという大変重要なステップに関与している構造変化を同定することに成功した。,
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