研究概要 |
1.MC5発現系の構築 本研究においては、キネシンファミリーの微小管モータ分子であるncdの短縮変異体MC5(modified claret 5)によって起きる、微小管の1次元ランダム運動の非線型動力学解析を行なう予定なので、まず遺伝子工学によるMC5の発現系を構築することにした。pETベクターを用いたMC5の発現ベクターを現在構築中である。 2.分子モーター単分子の歩行運動の運動速度および揺らぎを説明する理論 私は英国バーミンガム大学のNeil Thomas博士との共同研究を行い、単一の分子モーターの運動と揺らぎに関する一般的な理論を、熱力学と矛盾しない形で確立した(Thomas, Imafuku, and Tawada, 2001)。この理論とキネシン分子の構造解析の知見に基づいて、私たちは、キネシン分子の2つの頭部が協調的に結合と解離を繰り返しながら微小管上を歩行する、という「キネシン歩行モデル」を構築した(論文は準備中)。このキネシン歩行モデルの解析を行うと、これまでに知られている単一キネシン分子の力学的性質(例えば、運動速度のミカェリス定数Kmの荷重依存性など)が良く説明できた。この例は、方向性のある運動を発現するためには、たとえ単一のキネシン分子においても、2つの頭部が微小管との間で協調のとれた結合と解離を繰り返す必要があることを示している。 またモーター分子歩行運動モデルは、多少の改変を加えることでミオシンファミリーのモーター分子であるミオシンVの単分子運動の性質も説明できることがわかった
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