研究概要 |
大腸菌S30抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系を核として,ゲノムにコードされた多数のタンパク質を,同時並行で,迅速に発現調製する系を確立することを目的として,今年度は以下の研究を進めた. タンパク質の高次構造を調べる場合,適切にフォールディングした,構造解析に適した試料を調製する必要がある.タンパク質のアミノ酸配列とフォールディングの相関関係について,これまでに得られている知見からは,残念ながら,対象となるタンパク質が適切にフォールディングするかどうかを予測することは難しい.そのため,対象タンパク質が構造解析に適した試料となるかどうかは,実験的な手法により調べる必要がある. この目的において,1H-15N HSQC NMRスペクトルは極めて有用な情報を与えてくれる.そこで,HSQCスペクトルを測定するために必要な15N標識タンパク質の調製・精製を,ハイスループットで行う系を開発した.まず,試料は発現Tag(His-tagなど)との融合体で発現するために,昨年度開発した二段階PCR法を用いて発現鋳型を調製した.測定に必要なmgオーダーの試料を同時に多数得るために,3mLスケールの透析反応を同時並行して行うことにした.合成後の目的タンパク質は,ロボットを用いて,アフィニティークロマトグラフィー法で精製することにした.このプロトコールに従うことにより,24検体の15N標識タンパク質が,実験開始から24時間以内に得られるようになり,NMR測定を含めても2日以内に,24対象試料に関する構想解析適性情報が得られることになった.これまでは,1試料に関する情報を得るのに,数日間以上かかっていたことから,本研究の成果により,飛躍的に効率が上がったことになる.
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