申請者は、昨年度の尾索動物ユウレイボヤCiona savignyi(海鞘綱腸性目)のミトコンドリアゲノムの全塩基配列の決定に続き、新たに尾索動物亜門のタリア綱に属するアンボイナサルパRitteriella amboinensisとウミタルDoliolum nationalisのミトコンドリアゲノムの全塩基配列の決定を行った。また、C. savignyiと同属種であるカタユウレイボヤのC. intestinalisのミトコンドリアゲノムの約60%の領域の塩基配列を決定した。その結果、C. savignyiとC. intestinalisとの間で、ミトコンドリアゲノムの遺伝子配置の一部が異なっていることが明らかとなった。また、R. amboinensisとD. nationalisのミトコンドリアゲノムの構造が、遺伝子配置のみならず、遺伝子の数や種類も含め、この2者だけではなく尾索動物マボヤHalocynthia roretzi(海鞘綱壁性目)やCiona spp.とも大きく異なっていることが明らかになった。D. nationalisではtRNA遺伝子の一つが欠落しておりtRNA編集やtRNAの細胞質からの移入等の現象の存在が示唆された。またR. amboinensisではlong noncoding regionとそこに隣接する4種のtRNA遺伝子の重複が見られ、ミトコンドリアゲノムの複製とゲノム構造の変化の関連が示唆された。以上のように、申請者の解析により、尾索動物のミトコンドリアゲノムは、多細胞動物の中でも特に多様性を示すことが明らかとなった。また、ホヤ類と同様なミトコンドリア変則暗号をタリア類でも使用していることも明らかとなった。また、ユウレイボヤの5種類のミトコンドリアtRNAのcDNA解析を行い、その遺伝子の5'末端と3'末端のゲノム上の位置を特定した。
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