研究課題/領域番号 |
12780565
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経解剖学・神経病理学
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
新井 華子 群馬大学, 医学部, 助手 (30312888)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2001年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | シュワン細胞 / シュワン細胞腫 / 免疫組織化学 / モノクローナル抗体 / 好酸性硝子滴 / 細胞老化 / 髄鞘 / 抗体 |
研究概要 |
ヒト馬尾神経を出発物質としてSchwann/2E抗原の精製の試みを重ねてきたが、おそらく膜貫通性の疎水性の強いタンパク質であり、カラムへの非特異吸着の解決や可溶化条件を見出すことに困難を強いられ、解析可能なレベルまで精製度を上げることができなかった。 ヒト馬尾神経は特別に許可の得られた剖検例を使う以外に方法はなく、研究材料は極めて限られる。そこで実験系をin vitroに移行させることを目的に、ヒトシュワン細胞腫を多数例収集してSchwann/2E抗原の発現について検討した。シュワン細胞腫はNeurofibromatosis type 2において好発するが、脳神経、脊髄根神経、その他の末梢神経にも好発する比較的頻度の高い腫瘍である。聴神経に好発することや、感覚神経に好発するなどの疫学的事実が判明しているが、細胞レベルでの差異は明らかになっていない。今回の検討の結果、シュワン細胞腫はSchwann/2E抗原の発現の有無で2種類に分けられることが判明した。この成果をもとに数検体のヒトシュワン細胞腫の培養系確立を試みたが、数代の継代で増殖停止に至り、解析可能なレベルには達しなかった。成長因子などの添加を検討する必要があると思われた。 今回の研究から派生して、多数のシュワン細胞腫を詳細に観察したところ、未知の好酸性硝子様構造物を見出した。検討対象は172例のシュワン細胞腫で、好酸性硝子滴の出現頻度を腫瘍の部位ごとに分類すると聴神経由来8/43例(18.6%)、その他の脳神経由来1/9例(11.1%)、脊髄神経根由来1/30例(3.3%)、軟部由来2/89例(2.2%)である。Fisher's直接確率法で聴神経群と軟部群で統計学的有意差が認められた(P=0.002)が、単純な頻度の比較では聴神経群がもっとも多かった。電顕的には0.4-4μmの直径を持つsecondary lysosomeで、免疫組織化学的検索ではその所見を裏付けた。興味深い点として、この顆粒を有する細胞のMIB-1陽性率はほとんどゼロであることが判明した。しかも形態上はアポトーシスなどの細胞死を示さずにviableな状態にとどまっていた。つまり腫瘍細胞でありながら細胞周期をはずれた状態にあり、新たな細胞老化のモデルとなりうるのではないかと注目している。この研究成果は現在投稿準備中である。
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